ゆるろぐ -Urbanisme Log-

建築、都市を学び、生業とするわたしのことだま。

道東ろぐ9 〜被災したという自覚はじわじわと沸き立つ〜 ​

停電でバスが運休になるなんて、一ミリも思っていなかった

 

昨日が夜行バスでの移動だったので、布団に入った僕はすぐに深い眠りに着いた。

 

そして翌朝。

 

朝起きる直前、妙にリアルな夢を見ていた。夢の中の出来事からシームレスに起きる、なんてことはそんなに頻繁に起こることじゃない。

 

時間を、スマホで確認するとまだ5時。

目覚ましの鳴る1時間も前に起きてしまった。僕を起こすことだけが楽しみの目覚ましには申し訳ない。

 

夢のせいか、妙に目が冴えている。

 

せっかく早く起きれたのだから、阿寒湖をたくさん観光しようと思い直して、布団を出る。

 

部屋のドアの近くで扇風機を回して洗濯物を乾かしていた。

スイッチを入れて寝たはずなのに、何故だか扇風機は止まっていた。

洗濯物を触ると湿っている。

なんで扇風機止まっちゃったの?と思ってスイッチを入れるが動かない。

何度もオンオフを繰り返すが全く動かない。

この扇風機はあまり使われていなくて、久々に回しっぱなしにしたら壊れちゃったのかもしれない。

ということにして、扇風機はもう諦める。

 

温泉に入って身体を覚ますことにした。

 

温泉は誰もいない。

貸切状態だ。

 

シャワーのレバーを上げる。

が、お湯が出ない。

というか、水すら出ない。

 

ここは所詮バスセンター。

早朝だから、シャワーを止めてしまっているんだろう。

 

幸いにも浴槽に溜まっている透明な液体は暖かい。温泉は電気がなくても暖かいから素晴らしい。

 

お湯に浸かる。

身体に染み込む。

足を伸ばして、一息つく。

「温泉、最高〜」

 

しばらくすると、ひとりのおじさんが入ってくる。

シャワーが出ないことを伝えねば、と思うもまだ今日一度も言葉を発していない僕の喉は少し躊躇する。

 

おじさんがシャワーのレバーを上げたのを見て、「シャワー、出ないんですよ」と声が出た。

 

「あー、やっぱり停電か。」と、おじさん。

 

シャワーが出ない原因が停電だと分かる。ただ、「やっぱり」という言葉が引っかかる。

 

浴槽のお湯で身体を洗い始めたおじさん。

 

「嫁さんから北海道の地震が大丈夫かって連絡があったんだよ。俺は揺れに気づかなかったなあ」

 

ん?

地震

 

札幌で大きな地震があって、それで道東地域も停電しているらしいことを知った。

 

よくよく思い返せば、今朝地震があった気がする。

結構揺れた気がしたけど、眠すぎて一瞬目を覚ますだけですぐに眠りに戻った。

今朝の夢は、そんな経緯からだったのかもしれない。

 

風呂をあがって、スマホを手に取る。

ツイッターを開くと、トレンドは北海道で埋め尽くされてる。

 

とんでもない地震であることだけは瞬時に理解できた。

 

苫小牧にある火力発電所が被災して、北海道全域の電気供給が止まっていた。

 

朝は明るい。

 

停電であることを理解したとして、全く困らない時間が朝である。

特に実感もないまま、とりあえず出かける支度をして早朝の阿寒湖に行く。

 

昨日コンビニで買ったパンを持ち、廊下の冷蔵庫からお茶とヨーグルトを取り出して宿舎を出る。

 

早朝は、人影も少ない。

明るい空と澄み切った空気だけ、といった感じだ。

 

だからこそ、停電であるなんて関係ない。

 

明るい時間の阿寒湖もまた、綺麗だった。

それでも、昨日見た夕暮れの阿寒湖には劣っていた。夕暮れに阿寒湖を見れて良かったと改めて思った。

 

湖畔のベンチで朝ごはんを食べる。

ヨーグルトは少しぬるい。そうか、停電で冷蔵庫も機能してなかったのか。忘れたように思い出すけど、北海道が停電だなんて未だに信じられない。なんたってまだ朝だからだ。

 

昨夜とは別の方向に、散歩コースがあるので湖畔に沿って歩いてみる。

 

↑朝の陽光が降り注ぎ、美しい。

↑突如現れる壁は…。

↑「根こそぎ」倒れた木である。まさに、「根こそぎ」。

↑開けた場所につく。

↑ここは、ボッケ。アイヌ語で「煮え立つ」という意味。地下からボコボコと沸いている。

↑色が薄く変わっているのは、沸き立っている場所の周辺だ。

↑森の中は、今まで訪れたことのあるどんな森とも違う雰囲気だった。

↑奇妙な倒木。

↑倒れた看板。台風のせいだろうか。それとも地震のせいだろうか。

↑森の出口は、神社の裏に通じていた。木を下るリスを発見。

 

30分ほどの散策を終えると、摩周駅へ向かうバスの時間にはちょうどいい時間になっていた。

むしろギリギリすぎるくらいだ。

小走りでバスセンターへ戻る。

バスセンターの横には、乗る予定のバスが停まっているが、まだ乗客はいない。運転手もいない。もうすぐ出発なのにおかしいな…、と思いながら横目で通り過ぎて部屋へ戻る。

荷物を取って宿泊所の窓口で鍵を返す。

 

バスに向かおうとすると、バスの窓口に数人の人だかり。

近づいて話を聞くと、バスは運休だという。

停電でバスが運休になるなんて、一ミリも思っていなかったぼく。呆然とするしかなかった。

停電になると、信号が点灯しない。無線が動かない。ガスの供給ができない。

つまり、走れない、ということだ。

 

これからどうしよう。

空港へのバスは、いくつか運行するという。

青年は、立ち尽くす。この時ばかりは、非常事態の北海道にいることを自覚しないではいられなかった青年。身体中の鼓動が、少しだけ早くなって脈を打った。