道東ろぐ1 〜旅の始まりはいつも急だ〜
「最悪」の始まり、だったのかもしれない。
旅の始まりはいつも急だ。
会社の制度で支給される夏期休暇。
土日を挟んでできるだけ長く旅に出れるように日程をおさえた。
約1週間の夏休みである。
ぼくは、どちらかというと、いや、かなり夏という季節が好きだ。
↑写真フォルダから探した今年の「夏」っぽい写真
真っ白の日差しは、もちろん暑いけど、ぼくを元気にする。
身軽な服装は、ぼくがどこまでも遠くに行くことをあり得る世界にしてくれる。
だから、夏は最大限遠くに行きたくなる。
でも、パスポートはない。
何故ならインドに置いてきたから(詳細は、以下インドろぐ参照)。
パスポートがないから、行き先は国内に絞られる。
日本で一番遠い場所。
沖縄、小笠原、北海道。
冬は寒くて行くことがないだろう北海道を目的地にすることにした。
そして、中でも一番遠いであろう知床を目的地とした。
もちろん遠いだけが理由じゃない。知床を見て見たかった。
そんなことを思っていると、いつのまにか旅は1週間後に迫っていた。
女満別空港から行くのか、釧路空港から行くのか。
直通便か、それとも新千歳空港経由か。
こんなことも結局は前日に決めた。
旅の始まりはいつも急だ。
ぼくにとっては、これがいつも通りになっている。
だから、そんなことはなんとでもなればよかった。
家から1歩外に出てしまえば、あとは進むがままで進んでいく。
何事もスタートを切ってしまえば、ほとんどの大仕事が終わったようなものだ。
ただひとつだけ、いつも通りではないことが旅の始まりに起きていた。
それは、台風21号だ。
家にテレビがない生活をしているから、直前まで台風21号が今年一の台風だなんて聞いたことも見たこともなかったけど、まさにこいつと追いかけっこになる日程だった。
最悪の始まりだった。
いや、「最悪」の始まり、だったのかもしれない。
ぼくは台風から逃げるように、始発の電車に乗り込み、始発の飛行機に乗って北海道へ飛んだ。
青年は経由地である新千歳空港へ向かった。