道東ろぐ6 〜運休の嵐〜
信号の赤と緑と、シマシマの道路は奇妙に映った。
急に目が覚める。
相変わらず、バスの車内にぼくはいる。
びっちりと閉まったカーテンをかき分けて、やっとの思いでできた小さな隙間から外の光が入る。窓の外には、灰色の世界が広がっていた。
なんともいえない気持ちになって、カーテンを締める。
前のシートの背中についているネットの中に放り込んだスマートフォンを、取り出して時間を確認すると、午前4時30分。
あと40分ほどで着く。
もう一度、眠りにつこうとしたけど、もう数十分前のぼくには戻れない。
どうやらぼくの身体は、バスのシートでぐっすり寝ていられる制限時間が決まっているみたいだ。
でも大丈夫。
スマートフォンをいじっていれば、時間は一瞬で過ぎ去る。
午前5時過ぎ、釧路駅前に到着した。
少し、雨が降っている。
濡れてしまうから、急いで駅へ向かうが、信号に捕まる。
立ち止まって改めて周りを見る。灰色をバックに、四角い建物と、とんがった協会が目に入る。
信号の赤と緑と、シマシマの道路は奇妙に映った。
駅へ着く。まずは、トイレで用をたす。
駅の中の店はもちろんひとつもやっていない。
セブンイレブンだけは、開店の準備をしていた。
待合室に入って、これからの予定を立てる。釧路湿原に行くことしか決まっていない。まずは、今夜の宿を取らなければ。
一人旅に来ている時は、ユースホステルやゲストハウスなどの安い宿に泊まることにしている。それらは、安いだけじゃなく、場所によってはおしゃれなホテルが多い。
ただ、この日は泊まろうと思っていたユースホステルは満席だった。どうしようかと悩みつつ、ネットサーフィンをしていると、過去の道東旅について書かれているサイトを発見。
これによれば、阿寒バスセンター宿泊部という安い宿があるみたいだ。阿寒湖は高いホテルばかりだったので助かった。
すぐに電話をかけると、予約が取れた。
素泊まり、4000円。安い。
そして、電車を確認しようと思い、釧路駅の改札へ行くと、なんだか騒がしいアナウンスが流れている。
声が割れて、アナウンスの声がほとんど聞こえないが謝っているのだけは分かった。
電光掲示板を見ると、なんと、、、、、、、。
運休だ。
台風の影響で、線路上に樹木などが倒れていないか確認するためだという。
午後から電車は動くと言われた。
釧路湿原は諦めるしかなかった。
もしかすると、バスが動かない可能性もある…!と思って、駅員に聞くと、バスセンターの場所を教えてくれた。
駅からすぐのところにあるバスセンターへ向かった。
↑改めて釧路駅の周辺を見ると、廃墟のような建物ばかり。
バスセンターで、阿寒湖までのバスを運行している阿寒バスのカウンターに行くが、まだ誰もいない。
7時頃におばさんが出てきたので、聞くと今のところ運休の予定はないとのことで安心した。
阿寒湖行きのバスの時間を確認して、今日は釧路市内を観光することにした。
釧路は、建築家の毛綱毅曠の出身地であり、彼の建築がたくさんある。
青年は、灰色の街に出かけた。