インドろぐ6 〜チャンディーガルのコルビュジェ、コルビュジエ、コルビジェ〜
セクター43が今ごろ豪雨だろう。
ゴロゴロ、ダダダダ
うるさくて目が覚めた。
外を見ると、濃い灰色の重たい雲の間から、オレンジ色の筋が差している。
強めの雨が、短時間降っては止み、降っては止みを繰り返す。
それでも遠くでは日が差している。なんとも言えない風景だ。
僕の泊まっているホテルSkyview Holiday Homeは口コミで朝食が上手いと書いてあったから、朝食付きと勘違いしていた。
前日に、朝食は朝8時からと言われていたのも、その勘違いを助長していた。
8時まで、着替えや荷物の準備を済ませて、1階に降りるとスタッフが寝ている。
朝食は頼まないと出てこないことを知る。
部屋に戻り、どうしようか迷ったが、キャピトルコンプレックスの見学時間は、朝10時からなので、時間があるから朝食を食べる選択をする。
電話すると、スタッフの人が部屋まで来た。
スタッフの一人は、ニューハーフの若い青年。
来た時は少し警戒したが、とても良い方だった。料理も彼の手料理である。
↑朝食。たしかにとっても美味しかった。インド料理はよくケチャップが出てくる。
↑Skyview Holiday Home
まちのはずれにあるから、周りには何もない。
静かで良いホテルであった。
チェックアウトを済ませ、いざ出発。
のタイミングで、にわか雨が降ったので、待機。
すると、昨晩予約したバラナシでの宿からメールが届いた。
バラナシでは、ルドラゲストハウスに泊まる。日本人のオーナーさんのとても良い宿だ(これについては、バラナシの回で述べる。本当に本当にお世話になった)。
雨が弱まったので、いざ出発。
まずは、キャピトルコンプレックスに向かう。
キャピトルコンプレックスとは、行政施設が集まるエリアで、コルビュジエが設計した建物が多くある。
↑キャピトルコンプレックスまでは歩きで向かう。森が多いエリアの道。
20分ほど歩いて、Capitol Complex Tourist Centreに到着した。
キャピトルコンプレックスを見学するためには、Capitol Complex Tourist Centreへ行く必要がある。なぜなら、ツアーでしか入れないからだ。
ツアーは、10時、13時、15時の全部で3回のいずれかに参加する必要がある。
料金は無料。
それぞれの時間の10分前に着けばいいらしい。
着くと、カウンターでパスポートを渡し、コピーを取ってもらう。
↑Capitol Complex Tourist Centre
この観光センターもコルビュジエの建築であろうか。
中には、コルビュジエのアート作品が飾られている。
↑壁にかけられているのは、コルビュジエのドローイング
↑コルビュジエの作品
僕以外のツアー参加者は、オーストラリア人のおばさん2名と、スイスから1人旅でインドに来ているおばあさん1名だった。
少人数のため、ツアー客同士でコミュニケーションをとる機会が多かった。
建築好きのスイス人のおばあさんに、Doshiという建築家の名前を教えてもらった。その2週間後に、Doshiがプリツカー賞を受賞した話は、また別の記事で書いている。
少し待つと10時になった。ガイドの人を含め、計7人で出発した。
↑なめらかな曲面のコンクリートの橋を渡る。
↑キャピトルコンプレックスは非常に広い。公園の散歩道のような道を歩いていると、早速建物が見えてきた。高等裁判所だ。
↑高等裁判所/High Court of Punjab and Haryana
右に見切れている男性がガイドの方。
↑建物の手前は、ゆるやかに下がっている。世界遺産登録前は、ここに水が溜まっていたらしい。今日は、運良く雨だったので、少し水が溜まっている。水面に建物が映ることをコルビュジエは狙っていたらしく、その光景を見ることができた。
↑オープン・ハンド・モニュメント/Open Hand Monument
非常に汚く見えるが、これは裏側が見えている状態。嘘だと思うが、この数十トンの重さがあるモニュメントは、風が吹くと回転する。
↑異様な空模様。まだキャピトルコンプレックスには雨は降っていないが、遠くで雨が降っているみたいだ。ガイドの人は、セクター43が今ごろ豪雨だろうと笑いながら話していた。
↑これもコルビュジエデザインのGeometric Hill
個人的に一番興味深かった。チャンディーガルは、キャピトルコンプレックスがあるセクター1に向かって徐々に高度があがるなだらかな傾斜地につくられた。そして、キャピトルコンプレックスを、コルビュジエは緑の多い場所にしようとしていた。街の中心からキャピトルコンプレックスのあるセクター1を見た時に、できるだけ緑の印象をつけるために、このGeometric Hillをランドスケープとして設計した。写真の奥側は、緑が生えているため、街の中心部からセクター1の方向を見るとキャピトルコンプレックスのコンクリートの広場などは一切目に見えないように設計された。これもまた都市計画だ。
↑影の塔/Tower of Shadows
コルビュジエの考える光と建築の関係を体感できる建築。東西南北に正確に向いた正方形の敷地。それぞれの窓からは、特定の時間ごとに光が差し込む、的な説明を受けた気がするが忘れてしまった。
ここを見学している最中に、雨が強まったため、ここで雨宿り。非常に役に立つ建築だと、みんなで笑いあった。中には、インド人が休んでいた。彼らは、ここで働いている人たちだろうか。
↑見る角度によって、建築の印象が大きく変わる。
↑雨宿りをするガイドさんとツアー客
奥に高等裁判所が見える。
雨が止んだので、ツアーが再開。
↑議事堂/Punjab Vidhan Sabha
屋根の上のモニュメントは、それぞれチャンディーガルが所属する二つの州のモニュメントである。
↑行政庁舎/Punjab Civil Secretariat & Haryana Civil Secretariat
↑行政庁舎の屋上からキャピトルコンプレックス全体を見渡すことができる。
↑屋上の様子。非常にコルビュジエらしい。斜めの屋根は風を受け止めるデザイン。
↑美しいプロポーション
約1時間30分のツアーはこれで終了。
スタート地点に戻り、解散。
コルビュジェの建築を間近で見ることができる貴重な機会だった。50年以上前のデザインなのに、どうしてこうもかっこいいと思えるのだろうか。コンクリートの量が凄まじいことはわかった。幾何学的な美しさを感じた。
ただ、一つ悔やまれるのが、今日が土曜日であったこと。
建物内部の見学は、平日のみなのだ。
昨日デリーで騙されていなかったらと、ここで後悔。
だが、後悔しても仕方がない。ここに来れただけよかった、そう思うことにしよう。
建築学科に入って、初めてのトレースはコルビュジェの小さな家であったことを思い出す。青年は、建築の原点に触れたキャピトルコンプレックスを後にする。コルビュジェの計画した都市を堪能しに。
Chandigarh Revealed: Le Corbusier's City Today